MT4 EAのナンピンとは 安全設計と現場運用の考え方

MT4

ナンピンは、含み損が出たときに同方向へ建玉を追加して平均取得価格を近づけ、比較的浅い戻りで利確を狙う考え方です。レンジでは勝ちやすく見える一方、強いトレンドで含み損と必要証拠金が同時に膨らみやすく、設計と資金管理を間違えると一気に口座が苦しくなります。EAで使うなら、どこまで増やすか、どの間隔で積むか、どんな条件で撤退するかを最初に決めておくことが大切です。

まずは追加エントリーの間隔です。固定pipsでも動きますが、相場の荒さに合わせて可変にすると安定しやすくなります。目安としては直近のATRの0.8~1.5倍ほどの距離を基準にし、値動きが荒いときは自然と広がるようにしておくと、短時間に段数だけ増える事態を避けやすくなります。次に最大段数です。資金、想定する逆行幅、ロットの大きさから逆算し、等間隔・等ロットで最悪ケースを見積もって上限を決めます。上限を曖昧にしたまま増やすと、想定外の連続逆行でマージンコールに近づきます。

ロット配分は、等倍で積むか、緩やかに増やすかが基本です。倍々に増やすマーチンは短期の回復力は高いものの、破綻速度も上がります。中級者の運用なら、等倍または「初回1.0→1.2→1.5」程度の穏やかな逓増にとどめ、口座全体の見通しを持てる範囲で調整するのが無難です。利確方法は二通りあります。個々のポジションで小さく取る方法は機会が多い反面、全体の回転に時間がかかります。複数建玉をまとめるバスケット決済(まとめて平均取得価格に小幅上乗せで一括決済する方法)は回復時の効率が良い反面、チャンスは限定されます。どちらを選ぶにせよ、スプレッドが広がる時間や約定が遅くなりやすい時間の新規・決済を避けるだけでも無駄な段数とコストを抑えられます。

撤退ルールは三層で組むと堅くなります。価格の線引きによる損切り、一定時間戻らないときの建玉軽減、そしてエクイティベース(口座全体の資産額に閾値を設け、到達で新規停止や一括手仕舞いを行う方法)です。例えば「一日でエクイティが5%減なら新規停止、10%減なら全クローズ」のように、前もって線を引いておくと、想定外の連鎖損失を機械的に止められます。日次の最大ドローダウンや最大クローズ損失額も口座単位で決めておくと、粘りすぎを防ぎやすくなります。

運用面の工夫も利益に直結します。重要指標前後や流動性が薄い時間帯は新規を禁止し、スプレッドが閾値を超えたら自動停止にします。通貨の相関にも注意が必要です。似た動きをしやすい通貨ペアを同時にナンピンで回すと、実質的に同じ方向のリスクを重ねることになります。通貨グループを分けて稼働時間帯をずらす、口座横断で総ロットや総ポジション数に上限を設ける、といった設計で資金の偏りを抑えられます。

検証では、静かな期間だけでなく、急騰急落やトレンドが強い期間も含めます。最適化の数字だけを追うのではなく、ウォークフォワード(ある期間で調整した設定を次の未使用期間で検証して通用性を確かめる方法)で“通し”の強さを確認します。あわせて、モンテカルロの撹乱(乱数で取引順序や一部の値動きを揺らし、成績のブレ幅と壊れにくさを測る方法)で結果の安定性を点検しておくと、偶然の並びに左右されにくくなります。狙うのは最良値ではなく、環境が変わっても崩れにくい設定です。

日々のモニタリングでは、含み損の増え方、段数の伸び、証拠金使用率、実効レバレッジ、スワップ負担を定点観測します。想定を超えたら、新規停止やロット自動縮小などの安全装置が動くようにします。EAを複数走らせる場合は、端末ごとに通貨や手法を分け、負荷や約定品質を落とさない範囲で分散するのが現実的です。

以上のように、ナンピンEAは「日常のコツコツ」と「非日常の急変」に同時に備える発想が欠かせません。間隔は相場の荒さに合わせて可変、段数とロットは資金から逆算、撤退は価格・時間・エクイティベースの三層、検証はウォークフォワードとモンテカルロの撹乱で頑健性を確認、運用はニュース回避と相関管理を徹底する。この流れを守れば、リスクを抑えながらナンピンの強みを生かした運用に近づきます。

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